汝よ、死んでしまうとは情けない。ほら、ドラゴンの血を飲んでよみがえるのじゃ。と誰かが言ったとか言わなかったとか。しかしそれが現実のものに……なったらビックリしますよね?
異世界の話ではありません。リアルでドラゴンの血が、人を救う抗生物質になるかもしれないというお話です。
院内感染が大問題に。多剤耐性菌とは
かつて不治の病とまで言われた結核は、抗生物質の発見によって治療が可能になりました。そして薬剤は量産によって安価となり、根絶が可能に思えた時期もありました。
その明るい安村……ではなく未来に暗い影を落としたのが、多剤耐性結核菌の登場です。抗生物質が効かない結核菌が誕生してしまったのです。
そもそも抗生物質って何?ペニシリン?何それ?
しかし人も黙って見ているわけではありません。イタチごっこではありますが、次々に新しい抗生物質を開発しています。
かつて抗生物質は、微生物が一生懸命合成したものを人がちゃっかり横取りしていました。しかしそれでは微生物が気の毒な(生産性が低い)ので、現代では遺伝子組み換え技術などを使って化学的に生産されるようになりました。
人も襲う。コモドドラゴンというモンスター
インドネシアに生息するコモドドラゴン(正式名コモドオオトカゲ)は、体長3m、体重70kgというとても小さな? ドラゴンです。トカゲだと思うととても大きいですが。
人の言葉はしゃべりませんし火を吐いたりもしません。もちろん倒しても経験値は入りません。
その上、歯には猛毒(ヘモトキシン)があり、水牛さえも倒して食べてしまうほど凶暴なモンスター(は虫類)です。
冒険にはあまり役に立ちそうにないコモドドラゴンですが、ある研究チームが血を採取したところ、細菌から身を守るためと思われる物質(ペプチド)が多数発見されました。
抗生物質の候補になりそうなアイテムがうじゃうじゃ存在していたのです。まさしく賢者の石状態でした。
近未来の抗生物質
ジョージメイスン大学の研究チームは、このペプチドを手がかりに「DRGN-1」という抗菌物質を開発しました。
これを細菌に感染したマウスに投与すると、強力な抗菌作用と、バイオフィルム(微生物が集団で作る防護壁)抑制作用があることが確認されました。
最後に
結核に限らず耐性菌が増えている現状で、新薬の開発は遅れがちなっています。日常的な感染症で命を失うという時代が、すぐそこにやってきているかもしれません。
この抗菌作用のあるペプチドは、現状の抗生物質にとってかわる存在になるかもしれないと期待されています。
従来とは違ったアプローチで耐性菌と戦う物質を、コモドドラゴンがもたらしてくれるかもしれないのです。今や、人類の希望の星と言ってもいいでしょう。
できればコモドドラゴンの犠牲によらずに開発・生産されることを望みます。
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